疫学
日本で実施された2011年の全国調査によると、ポルフィリン症の患者数は63例でした1。一方で、多くの未診断症例が存在していることも示唆されています。 1920年に国内で初めてポルフィリン症が報告されてから2010年12月末までの91年間に、926例のポルフィリン症患者が報告されました。ただし、これらは発症者のみの報告であり、遺伝的素質を持ちながら未発症の患者、もしくは医師が報告していない症例、および、誤診断症例などは含まれていないとのことです2。 急性肝性ポルフィリン症(acute hepatic porphyria:AHP)の発症は20-30代の女性に多いことが明らかになっています。また、女性ホルモン分泌との関係で閉経後は症状が発現しにくくなるとされています。
病型別の発症頻度
全報告の半数以上が皮膚型ポルフィリン症(cutaneous porphyria:CP)でした。晩発性皮膚型ポルフィリン症(PCT)が最も多く35.4%(328例)、次いで骨髄性プロトポルフィリン症(EPP)が21.9%(203例)でした2。 AHPの病型別発症頻度は、急性間欠性ポルフィリン症(AIP)が最も高く21.4%(198例)、次いで異型ポルフィリン症(VP)が6.0%(56例)、遺伝性コプロポルフィリン症(HCP)が4.4%(41例)でした2。
年齢別の発症頻度
ポルフィリン症は遺伝性疾患でありながら、病型ごとに年齢別の発症頻度が異なります。 AHPの発症年齢は、AIPで21-30歳、VPで21-50歳、HCPで21-30歳に多くみられました。AHPは女性に多く、妊娠可能な年齢での発症∗が多いことが明らかになっています2。 一方、CPは、CEPの約半数が幼年-若年、EPPで6-30歳、PCT、HEPで31歳以降に多くの発症がみられました2。 ∗: 生理前や妊娠、出産などの性ホルモンのアンバランスが発症の誘因となることが明らかになっています1。
男女別の発症頻度
AHPでは、男性よりも女性の発症頻度が高いことが、国内の調査から明らかになっています。一方、CPでは、一部の病型を除き男性の発症頻度が高い傾向にあります2。 このように、ポルフィリン症には、年齢差に加えて、性差もみられます。
海外における患者数
AHPの有病率は、およそ10万人に1人とされています3,4。 AHPを発症する女性患者では、その多くが15歳から45歳の間に急性発作を経験し、発症します5。加えて、長期にわたる罹患の結果、慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)や肝細胞癌発症のリスク上昇が報告されている点にも注意が必要です6-8。 AHPの急性発作では、多くに腹痛が認められ、しばしば背部痛がみられることもあります。しかしながら、腹痛の症状自体はAHPに限定されたものではありません。そのことが診断を困難にする要因となっており、実際に、急性発作の発症から診断まで平均15年を要したとするデータも報告されています5。
- 参考文献
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- 難病情報センターホームページ(2022年7月現在)から引用
- 近藤 雅雄, 矢野 雄三, 浦田 郡平. ALA-Porphyrin Science. 2012;1(2):73-82.
- Elder G, Harper P, Badminton M, et al. J Inherit Metab Dis. 2013;36(5):849-857.
- Ramanujam VM, Anderson KE. Curr Protoc Hum Genet. 2016;86:17.20.1-17.20.26.
- Bissell DM, Wang B. J Clin Transl Hepatol. 2015;3(1):17-26.
- Bissell DM, Anderson KE, Bonkovsky HL. N Engl J Med. 2017;377(9):862-872.
- Pallet N, Mami l, Schmitt C, et al. Kidney Int. 2015;88(2):386-395.
- Baravelli CM, Sandberg S, Aarsand AK, et al. J Intern Med. 2017;282(3):229-240.
- Bonkovsky HL, Maddukuri VC, Yazici C, et al. Am J Med. 2014;127(12):1233-1241.