AHPの原因は?
AHPはヘム生合成酵素の活性低下を原因とする遺伝性疾患です。ヘム生合成経路の律速酵素であるδ-アミノレブリン酸合成酵素1(ALAS1)が月経によるホルモンの変化、ダイエット、アルコール、一部の薬剤などにより誘導されると、中間体のδ-アミノレブリン酸(ALA)、ポルフォビリノーゲン(PBG)などが体内に過剰に蓄積し、便秘や嘔吐を伴う激しい腹痛発作を主症状とした急性発作を引き起こします1。
尿検査による急性発作時の診断
急性肝性ポルフィリン症(acute hepatic porphyria:AHP)の診断は、上記のとおり急性発作時に上昇する、尿中のアミノレブリン酸(ALA)やポルフォビリノーゲン(PBG)を指標とした検査が有用です2,3。24時間蓄尿ではなく、部分尿で検査が可能です。 AHPが疑われる患者に対する尿検査は保険診療の範疇であり、かつ、侵襲性が極めて低いため、日常診療でも行いやすい検査となっています。ただし、急性発作時に異常値でも、寛解期には正常値に戻ることが多く、検査のタイミングや検査結果の解釈には注意が必要です。
AHPの病型を見極めるためには、下記4項目すべての尿検査を実施し、各検査値の上昇から病型を判断します。また、遺伝学的検査で病型を調べることも可能です3。
尿検査の項目 | 基準値 (随時尿クレアチニン補正後)*1 |
保険点数(検査料)*2 |
---|---|---|
δ-アミノレブリン酸(ALA) | 0.7~2.5mg/g・Cr | 106点 |
ポルフォビリノーゲン(PBG) | 2mg/g・Cr以下 | 186点 |
ウロポルフィリン(UP) | 2~44μg/g・Cr | 105点 |
コプロポルフィリンⅢ(CPⅢ) | 0.6~150μg/g・Cr | 131点 |
クレアチニン | 補正用 |
*2 2024年8月現在
随時尿の場合はクレアチニン補正をすることが望ましいです
- 検査日数
- ALA 3〜5日、PBG 5〜11日、UP及びCPIII 4〜11日
- 検体の取り扱い
- 遮光スピッツ(必要量:ALA 1.0mL、PBG 3.0mL、各1本ずつ)、冷蔵、遮光にて保管
- 受託会社
- 株式会社ビー・エム・エル*、株式会社LSIメディエンス、株式会社エスアールエル *PBGの受託はビー・エム・エルのみ
電子カルテオーダーで項目が見当たらない場合は、検査部または受託会社へお問い合わせください。
かずさDNA研究所
かずさ遺伝子検査室
●遺伝学的検査の実施料*
D006-4 遺伝学的検査(2 処理が複雑なもの):5,000点
遺伝学的検査はAHPが疑われる場合に行うものとし、原則として患者1人につき1回限り算定できる。
ただし、2回以上実施する場合は、その医療上の必要性について診療報酬明細書の摘要欄に記載する。 臨床症状や他の検査等では診断がつかない場合に、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長に届け出た保険医療機関において検査が行われる場合に算定できるもの
* 2024年8月現在
- 参考文献
-
- Stein PE, Badminton MN, Rees DC. Br J Haematol. 2017; 176(4): 527-538.
- Anderson KE, Bloomer JR, Bonkovsky HL, et al. Ann Intern Med. 2005;142(6):439-450.
- 難病情報センターホームページ(2024年8月現在)から引用
- 尿検査による急性発作時の診断
- AHPで確認される生化学異常