AHPの発症要因
急性肝性ポルフィリン症(acute hepatic porphyria:AHP)は、神経毒性を有するヘム前駆体であるアミノレブリン酸(ALA)やポルフォビリノーゲン(PBG)などが体内に過剰に蓄積し、激しい腹痛や嘔吐、不安、四肢の痛みや筋力低下など様々な症状を引き起こす遺伝性の疾患です。激しい腹痛などを伴う急性発作を発端に、発症することが知られています。
最近の研究によると、遺伝子変異の頻度は当初考えられていたよりも高いことが示唆されています。しかしながら、遺伝子変異を受け継いでも、実際に有害な症状を発現する患者は多くないことも示されています。海外の研究によると、1つの遺伝子変異を持った患者のうち実際に発症するのは10%程度、とのデータもあります1。AHPの病態生理学的メカニズムでは、ヘム生合成プロセスの初期の段階で産生されるアミノレブリン酸合成酵素1(ALAS1)の発現増加が重要な鍵を握っています。それに伴い、ALAやPBGなどの神経毒性を有するヘム前駆体の蓄積が生じることが明らかになっています。 その後、ALAとPBGは循環系に入り、自律神経系、中枢神経系、末梢神経系の機能不全を引き起こすと考えられています。 ALAとPBGは、いずれも急性発作時に上昇する特異的な診断マーカーです。ALAは、急性発作の原因として、また、発作と発作の間に進行する症状や、長期にわたり少しずつ悪化する末梢神経障害(ニューロパチー)の要因であることが明らかになっています2-5。
- 参考文献
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- Balwani M. Clin Adv Hematol Oncol. 2016;14(11):858-861.
- Puy H, Gouya L, Deybach JC. Lancet. 2010;375(9718):924-937.
- Anderson KE, Bloomer JR, Bonkovsky HL, et al. Ann Intern Med. 2005;142(6):439-450.
- Bissell DM, Wang B. J Clin Transl Hepatol. 2015;3(1):17-26.
- Lin CSY, Lee MJ, Park SB, et al. Clin Neurophysiol. 2011;122(12):2336-2344.
- ポルフィリン症の分類
- ヘム生合成過程の異常とAHP
- AHPの発症要因
- 疫学